私道での駐車はOK?NG?意外と知らないルールとトラブル対策

私道は私有地ですが、道路でもあります。私有地だから駐車は厳禁?でも道路だから一時的に駐車するのは大丈夫?どちらなのでしょうか。住宅の購入を検討するとき、私道付きになっていることは少なくありません。そのため、私道のルールを詳しく知ることは非常に大切です。意外と知らない、私道のルールと、トラブル対策をご紹介します。
目次
私道に駐車してもいいの?
私道の駐車トラブルは、決して少なくありません。実際に「私道に無断で駐車されて困っている」とすでに迷惑を被っている人もいるでしょう。結論からお伝えすると、私道への駐車には、所有者の許可が必要です。ここでは、そもそも私道とはどんな道路なのか、私道と公道の違いなどを詳しく解説します。
私道は「道交法」が適用されない!?
私道は、「所有地」という扱いになるため、基本的に道路交通法は適用されません。したがって、私道に長時間駐車していても警察に取り締まられることはないでしょう。ただし、すべての私道が該当するわけでなく、なかには例外もあります。例えば、私道には不特定多数の人が自由に通行できる「みなし公道」があります。こういった私道の場合は、実際に警察による取り締まりも行われており、交通違反をすれば公道と同様の罰則が科せられます。
私道とはどんな道路のこと?
私道は「個人や法人が所有する土地内につくられた道路」のことです。原則として私道を通行できるのは、所有者もしくは所有者から許可された人だけに制限されます。また、私道は個人の土地ですから、人に貸したり、権利を移転したりすることも可能です。
私道と公道の違い
道路には大きく分けて「私道」と「公道」があります。私道と公道の主な違いは表の通りです。
管理者 |
通行権 |
道路整備・管理 |
|
---|---|---|---|
公道 |
国・地方自治団体 |
誰でも通行できる |
国や自治体が負担 |
私道 |
個人・法人 |
所有者の許可が必要 |
所有者負担 |
普段、私たちが車や自転車、徒歩で通行している道は基本的に公道です。公道は、国や地方自治団体が管理しており、高速道路や一般国道、都道府県道、市町村道の4つが「公道」として定められています。
一方で、個人や法人が所有している道路を「私道」といいます。私道は、「ここは私道です」等の看板が設置されているケースもありますが、多くは何も表示していません。そのため、見た目で判断することはなかなか難しいでしょう。また、私道はあくまでも個人や法人が持ち主であるため、通行する際は所有者の許可が必要です。
私道はいろいろなところにある
私道は意外と身近なところにあります。普段何気なく通っている道も、実は私道かもしれません。例えば、住宅地など個人が家を建てるためにつくられた分譲地内の道路は私道に該当します。また、工場内の運搬用の道路、教習場内の練習コースなども私道です。
私道に迷惑駐車をされたらどうする?
所有している土地が「私道」に接する場合、家の前で迷惑駐車をされる可能性があります。「警察に通報すればいい」と思う方もいるかもしれませんが、先述した通り、私道では原則として道路交通法が適用されません。そのため、私道トラブルが発生した場合は、自分で対応する必要があります。ここでは、迷惑駐車をされた場合の対処法や対策について解説します。
迷惑駐車を警察に通報しても動いてくれない理由
私道の迷惑駐車は解決しにくいと言われています。その理由は次の2つです。
- 警察が介入しにくい
- 自力救済禁止の原則
公道で迷惑駐車をしているのなら道路交通法が適用されるため、警察は違反者に移動を命じられます。これに従わない場合は、道路交通法51条1項に該当するため刑事罰の対象となります。一方、私道に迷惑駐車をされた場合、道路交通法が適用されないため警察が介入することはできません。さらに、日本では「自己救済」が禁止されています。
自己救済とは、司法手続きによらず、自らの力によって自己の権利を確保することです。つまり、私道の所有者が勝手にレッカーで移動させたり、撤去・廃棄したりすることは法律で禁止されているのです。万が一、勝手に車両を動かしてしまうと刑事罰に問われたり、損害賠償を求められたりする可能性があるため注意が必要です。
迷惑駐車をされたときにできること
私道に迷惑駐車をされた場合、原則当事者間で解決しなければなりません。しかし、多くの場合、停車された車やバイクから所有者を特定することは困難です。そのため、私道に迷惑駐車をされた場合は次の流れで対応しましょう。
- 警察に通報する
- 車両、ナンバー、登録番号などを控える
- 警告文を作成し車両に貼り付ける
- 所有者が特定できたら注意喚起を行う
- 改善されなければ弁護士に相談し起訴する
日ごろから、私道に駐車されない対策を講ずることで、迷惑駐車を防げます。次の項目では、私道に駐車されないようにする対策について解説します。
私道に駐車されない対策が必要
私道に迷惑駐車をされないようにするためには、次のような対策が効果的です。
- 看板を設置する
- 障害物を置く
- 防犯カメラの設置
それぞれの対策方法を紹介します。
看板を設置する
迷惑駐車をする方のなかには、私道だとわからずに駐車してしまうケースがあります。このような場合、私有地内に「無断駐車禁止」等の看板を設置することで迷惑駐車を防げます。また時折、「無断駐車の方は、罰金○万円申し受けます」といった看板を目にすることがありますが、私道の場合、この罰金に法的な効力はありません。あまりにも不当な金額を請求した場合は、恐喝行為として訴えられるおそれもあるため注意が必要です。
障害物を置く
私道に三角コーンやチェーンを設置し、駐車できなくするのも1つの方法です。障害物があると障害物をどける手間がかかるため、駐車する側もその場所を避ける傾向にあります。ただし、すでに迷惑駐車をしている車を三角コーンで囲ったり、チェーンをして出られなくしたりすると、自己救済となり違法行為にあたるため注意しましょう。
防犯カメラの設置
防犯カメラの設置は、監視の目となるため迷惑駐車の抑制効果が期待できます。さらに、防犯カメラには録画機能があるため、証拠を残す手段としても有効です。ただし、防犯カメラの設置には安くない費用がかかるため、予算に合わせて検討しましょう。
私道のある土地を購入するときの注意点
私道負担付きの土地は、相場よりも土地価格が安い傾向にあります。そのため、興味を示す方も多いのですが、私道に面している土地は扱いが難しく、場合によって建物を建築できないこともあります。ここでは、私道のある土地を購入する際の注意点を詳しく解説します。
共有私道と単独所有私道の違い
私道には「共有私道」と「単独所有私道」の2種類があります。共有私道は、私道持分を持つ人全員で管理や修繕を行います。そのため、管理・修繕が必要になった場合、共有者全体の過半数の同意がなければ管理・修繕を行えません。
一方、単独所有私道は、私道を分割し、分割した私道はそれぞれが単独名義で所有します。共有私道と異なり、所有者の判断で管理・修繕を行えます。なお、単独所有私道は地役権が設定されているケースが多いです。地役権とは、一定の目的の範囲内で他人の土地を自分のために使用できる権利のことです。例えば、分譲地内の私道が単独所有私道であった場合、他人の土地を通行しなければ公道に出られません。このような土地では、日常的に他人の土地を通行することになるため、私道全体に地役権が設定されています。
共有持分がある私道はルールづくりが重要
共有私道の場合、1つの道を複数人で所有しているため、管理方法や駐車方法、固定資産税の支払いなどでトラブルになるケースがあります。これらのトラブルを防ぐには、日ごろから近隣住民と良好な関係を築いておくことが重要です。また、私道の管理や利用に関する基本的なルールを管理規約として文書化しておくこともおすすめです。例えば、日常の管理方法、駐車ルール、費用負担の割合などを具体的に文書にまとめます。特に重要な決定事項に関しては、その都度議事録を作成し、保管することが望ましいでしょう。
来客や一時的な駐車はどうすればいい?
家に来客がある場合、一時的に私道に停車することもあるでしょう。私道への駐車は原則として違法ではありませんが、私道に関する管理規約等がある場合はそのルールに従うべきです。一時的な停車であれば認められることも多いですが、長時間駐車すると他の所有者の通行を妨げてしまい、トラブルになる可能性があります。長時間駐車する必要がある場合は、近隣のコインパーキングを利用するなど、他の所有者へ迷惑にならない方法を検討しましょう。
私道のある土地を購入するときに確認すること
私道負担付きの土地を購入するときは、トラブルに発展することがあるため事前に以下の点を確認しましょう。
- 建築基準法上の道路に該当するか
- 私道の権利
- 負担する費用の内訳
それぞれについて解説します。
建築基準法上の道路に該当するか
私道に接する土地を購入する場合、その土地が接道義務を満たしているか確認しましょう。万が一、幅員4m以上の道路に2m以上接していない場合は、建物を新たに建てられません。周辺相場に比べて明らかに安い土地の場合、接道義務を満たしていないことがあるため、事前に不動産会社やハウスメーカーに確認しましょう。
私道の権利
私道に接する土地で建築を行う場合、原則として私道の持ち主に許可を取らなくてはなりません。私道の権利関係は、売買契約時の「通行承諾書」で確認できます。なお、私道が共有持分である場合は、共有者全員の許可が必要です。
負担する費用の内訳
私道の管理、修繕などにかかる費用は、私道の所有者が負担することになります。共有持分の場合は、公平に負担します。ただし、管理組合などが存在するわけではないため、金額や支払い時期、内容が曖昧なケースも少なくありません。物件購入後に「こんなに費用がかかると思っていなかった」と後悔しないためにも、できるだけ負担する費用の情報を集めておきましょう。