住宅ローン控除を賃貸併用住宅で利用する方法|適用条件と注意点を解説

家を建てたときは住宅ローン控除を利用することで所得の控除ができるため、税金を安く抑えられるようになります。実は賃貸併用住宅を建てたときでも、住宅ローン控除を利用することが可能です。ただし、住宅ローン控除を利用するには、いくつかの条件をクリアする必要があります。
賃貸併用住宅を建てるにあたって知っておきたい、住宅ローン控除の適用条件や注意点を解説します。
目次
住宅ローン控除とは?基本的な仕組みを解説
住宅を購入するとき、半数以上の方は住宅ローンを利用するでしょう。住宅ローンは、まとまった資金がなくても住宅が購入できる、ほかのローンに比べて金利が低いなどのメリットがあります。さらに、適用条件を満たせば「住宅ローン控除」という所得税や住民税の控除を受けることが可能です。ここでは、住宅ローン控除の仕組みや、対象となる住宅の条件、控除の手続きなどについて解説します。
住宅ローン控除の仕組み
住宅ローン控除は、一定条件を満たすことで入居した年から最長13年間、年末時点の住宅ローン残高の0.7%を所得税額から控除できます。控除額が所得税の額よりも大きくなる場合は、翌年の住民税からも控除が行われます(上限9万7,500円まで)。
なお、新築住宅だけでなく、既存住宅(中古住宅)でも条件を満たせば住宅ローン控除を受けられます。住宅ローン控除は節税効果が高いため、住宅を購入する多くの人にとって魅力的な制度といえます。
また、年間数十万円の税金が軽減されるため、家計への負担を軽減する助けとなるでしょう。ただし、住宅ローン控除には上限が設定されています。年収や住宅ローンの金額によっては、思っていたより控除が少ないと感じる場合もあるでしょう。
対象となる住宅の条件
では、住宅ローン控除の適用条件を確認していきましょう。
- 住宅ローンの返済期間が10年以上
- ローン契約者本人が居住している
- 引き渡し・工事完了から6カ月以内に入居
- 合計所得金額が2,000万円以下
- 床面積50㎡以上
- 店舗併用住宅の場合、床面積の2分の1以上が居住用
- 一定の省エネ基準に適合していることを示す証明書として「建設住宅性能評価書」または「住宅省エネルギー性能証明書」の交付を受けている
住宅ローン控除を受けるには、さまざまな適用条件をクリアしなくてはなりません。また、住宅ローン控除の仕組みや条件はたびたび変更になっており、2024年以降は「省エネ基準の適合」が追加されました。住宅ローン控除の利用を検討している方は、国土交通省のWebサイトで詳しい情報を確認できます。
控除を受けるための手続き
一般的に会社員や公務員の方などの給与所得者は、一定条件に該当しなければ個人の確定申告は不要です。しかし、給与所得者が住宅を購入した場合は、初年度のみ確定申告が必要になります。
確定申告で住宅ローン控除を申請する場合は、以下の書類が必要になります。入手先を確認して、確定申告の期間に間に合うよう早めに準備しましょう。
書類 | 入手先 |
---|---|
確定申告書 | 国税庁のWebサイト、もしくは税務署 |
住宅借入金等特別控除の計算明細書 | 国税庁のWebサイト、もしくは税務署 |
住宅ローンの借入残高証明書 | 住宅ローンを借り入れた金融機関から送付される |
源泉徴収票 | 年末調整後に勤務先から発行される |
土地建物の登記簿謄本 | 法務局 |
マイナンバーカード | 市区町村役場 |
住宅性能を示す書類(建設住宅性能評価書・住宅省エネルギー性能証明書など) | 不動産会社 |
2年目以降は、勤務先の年末調整で申請が可能です。申請する際は、住宅ローン残高証明書が必要です。多くの場合、10月ごろに自宅へ郵送されるため、紛失しないように注意しましょう。
賃貸併用住宅で住宅ローン控除を利用する条件
賃貸併用住宅では、賃貸部分はアパートローン、自宅部分は住宅ローンと分けてローンを組むのが一般的です。そのため、「自宅部分」では住宅ローン控除を利用できます。ただし、適用条件は一般的な住宅と多少異なります。適用条件を満たさない場合は、住宅ローン控除を利用できないため、適用条件を確認しておきましょう。
自宅部分の床面積が50㎡以上
賃貸併用住宅では、「賃貸部分」の住宅ローン控除が受けられませんが、「自宅部分」で住宅ローン控除を利用できます。ただし、多くの金融機関で「自宅部分の床面積が50㎡以上」が条件とされています。面積の限られた土地で賃貸併用住宅を建てる場合は、自宅部分が50㎡以上となるよう設計の工夫が必要になるでしょう。
※所得が1,000万円以下であれば、40㎡でも住宅ローン控除の対象となる特例があります。
なお、賃貸併用住宅には建物を上下階に分ける「横割り」と建物を左右に分ける「縦割り」という構造があります。それぞれの構造にメリット・デメリットはあるため、ライフスタイルに合わせて間取りのパターンを検討しましょう。
建物の床面積の1/2以上が自宅
自宅部分の床面積が50㎡以上という条件に加えて、「建物の床面積の1/2以上が自宅であること」という条件もあります。例として、延床面積90㎡の家で考えてみましょう。この場合、建物床面積の1/2を自宅にすると45㎡以上となります。しかし、これでは「自宅面積が50㎡以上」という条件を満たしていません。つまりこの例では、最低50㎡は自宅部分にしなければ住宅ローンの利用が認められず、住宅ローン控除も適用外になるのです。
一方、延床面積が150㎡の家では、建物の床面積1/2は75㎡となります。この場合は、2つの条件を満たしているため、住宅ローン控除を利用できます。
「居住の実態」が必要
賃貸併用住宅で住宅ローンを利用するには、「住宅ローン契約者本人または家族が居住する」という条件があります。たとえば、転勤などで一時的に契約者本人だけが引っ越して、家族が住み続ける場合は、住宅ローン控除の適用を受けられます。ただし、家族全員で転居する場合は、住宅ローン控除の適用外となるため注意が必要です。
賃貸併用住宅は控除対象と対象外に分かれる
賃貸併用住宅は、自宅とアパートが1つの建物になっているため、アパート経営でかかった費用は確定申告時に経費として計上できます。確定申告は節税において重要になるため、あらかじめ理解しておくことが大切です。ここでは、以下の項目について解説します。
- 住宅ローン控除の対象は「自宅部分」
- 賃貸部分は減価償却や必要経費として申告可能
- 住宅ローンの利息や返済も按分が必要
具体的な内容について見ていきましょう。
住宅ローン控除の対象は「自宅部分」
住宅ローン控除は、年末時点におけるローン残高の0.7%(2022年以降の契約)を所得税額から控除できる制度です(契約時期によっては1%)。ただし、住宅ローン控除の対象となるのは「自宅部分」に限られるため、自宅部分の割合で控除額を計算します。例として、自宅部分60%、賃貸部分40%、ローン残高4,000万円とした場合で考えてみましょう。
4,000万円(ローン残高)×60%=2,400万円
住宅ローン控除額=2,400万円×1%=24万円
上記の例では、住宅ローン控除として申請できるのは、24万円となります。一方、経費であれば「賃貸部分」の割合で費用を計算します。この点は混乱しやすいので注意が必要です。
賃貸部分は減価償却や必要経費として申告可能
賃貸併用住宅は、賃貸部分を貸し出すことで毎月家賃収入を得られます。しかし、家賃収入は「不動産所得」に該当するため、給与所得者であっても「給与所得及び退職所得以外の所得の合計額が20万円以上」となる場合は確定申告が必要です。なお、賃貸併用住宅では、以下の項目を必要経費として計上できます。
- 公租公課(固定資産税、都市計画税、不動産取得税、登録免許税、印紙税など)
- 修繕費
- 損害保険料
- 入居に関する広告宣伝費用、仲介手数料
- 管理委託料
- 共用部分の水道光熱費
- 解体費用
- 立ち退き料
- ローン利息
- 借入金利子
- 減価償却費
- その他(雑費、消耗品費、交通費など)
家賃収入から必要経費を控除することは、税制上の大きなメリットとなります。ただし、私生活における日用品を計上したり、プライベートの費用を計上したりすると、重いペナルティを課せられるおそれがあるため注意が必要です。
住宅ローンの利息や返済も按分が必要
自宅部分と賃貸部分を一体化して住宅ローンを受けている場合、公租公課や損害保険料、ローン利息、借入金利子などは建物の比率を元に按分して算出します。たとえば、自宅部分60%、賃貸部分40%の賃貸併用住宅で、20万円の損害保険に加入していたと想定しましょう。この場合、経費として申請できるのは賃貸部分の40%となり、損害保険料として計上できるのは8万円になります。
このように、プライベートと事業用の経費を割合で分けることを「家事按分」といいます。なお、計算する科目によって按分方法が異なるものがあるため、自分で判断できない場合は税理士へ相談しましょう。