民泊でも融資は可能?開業に必要なリノベーションと費用の目安

民泊用に魅力的な物件にするには、リノベーションなど費用をかける必要があります。自己資金だけで民泊を開業できればよいのですが、費用がかさむのであれば融資を検討する必要があります。民泊でもお金を借りられる方法を紹介します。
目次
民泊の開業でも融資を受けられる!
民泊を開業するときは、ある程度まとまった資金が必要です。現金で準備できればよいのですが、初期費用が準備できずに民泊開業に踏み切れない人もいるでしょう。そんなときは、ローンや融資を活用することをおすすめします。ここでは、民泊開業で受けられる融資について解説します。
民泊の開業に使える主な融資
民泊の開業時に利用できる融資には、次のような種類があります。
- 住宅ローン
- 事業用ローン
- 民泊事業向けローン
それぞれの特徴を見ていきましょう。
住宅ローン
住宅ローンは、金利が低い、住宅ローン控除が受けられることがメリットです。しかし、住宅ローンは原則として、事業目的に利用できません。ただし、自宅の一部を短期貸しするホームステイ型(家主同居型)の民泊で、自己居住面積が50%以上であれば、住宅ローンを認める金融機関もあります。融資の可否は金融機関の判断によるため、事前の確認が必須です。つまり、家主不在型の一般的な民泊では、住宅ローンの利用はできません。
事業用ローン
事業用ローンは、人件費や設備資金など、幅広い用途に使用できます。そのため、新規で民泊(家主不在型)の開業を希望する人には、事業用ローンが適しています。また、アパートやマンションの1室を使った民泊なら、不動産投資ローンやアパートローンも利用可能です。
民泊事業向けローン
民泊事業向けローンは、一部の地方銀行や信用金庫、またはネット銀行などが独自に提供している商品です。取扱金融機関は限られますが、民泊用途を明確にしたサービスのため、審査基準や融資額、返済条件などが民泊事業に特化している点が特徴です。民泊支援サービスや行政の創業支援ページを通じて紹介されることもあるため、情報収集を積極的に行いましょう。
審査で見られるポイント
住宅ローンも事業用ローンも、金融機関から融資を受ける場合は審査が必要です。一般的に審査基準といわれているものには、次の3つがあります。
- 経営状況
- 利用目的
- 信用情報
経営状況は金融機関が返済能力を判断する、重要なポイントです。しかし、開業して間もない、これから開業するという場合は、返済能力を判断するのは困難です。そのため、融資を受けられても金利が高くなったり、融資額が抑えられるなどの傾向があります。利用目的も審査基準です。事業計画を明示できるよう、整えておきましょう。
信用情報にも注意が必要です。クレジットカードの利用履歴やローンの借り入れ状況、滞納している支払いがないかなどを審査されます。スマートフォンを分割払いで購入したときの滞納状況も確認されるため注意が必要です。
開業前で実績がない場合は、日本政策金融公庫の創業融資制度など、公的支援の活用も検討しましょう。実績がなくても事業計画書の内容や将来性を重視するため、民泊開業の資金調達手段として有効です。
融資を受けるときの注意点
民泊開業で融資を受けるときは、次の点に注意が必要です。
- 綿密な収支計画を作成する
- 無理のない返済計画を立てる
- ローンが残っているセカンドハウスは利用できない
収支計画は利益がどのくらい出るのかを示すもので、ローンの審査に大きく影響します。そのため、宿泊料金、稼働率などを調整しながら、綿密に収支計画を作成することが大切です。収支計画が作成できたら、それを元に返済計画を立てます。民泊は閑散期と繁忙期の収益差が大きいため、返済計画では閑散期の資金繰りにも備える必要があるでしょう。
また、住宅ローンが残っている物件(セカンドハウスや別荘など)を民泊として運用すると、契約上の用途違反と見なされ、違約金や一括返済を求められるおそれがあります。居住目的で住宅ローンを融資しているため、民泊の運営前に必ず金融機関の承諾を得なくてはなりません。
民泊開業に必要な費用
民泊を開業するにあたり、具体的にどのくらいの開業資金を準備すべきか気になっている人もいるでしょう。民泊開業にかかる費用の内訳は次のとおりです。
- リノベーション費用……約200万円
- 消防設備に関する費用……約20~30万円
- 家具・家電購入費用……約30~40万円
- 広告宣伝費……約1~5万円
- 行政への届け出……約20~30万円程度(行政書士へ依頼する場合)
リノベーション費用
空き家や中古戸建てを利用して民泊をはじめる人は、状態に応じてリノベーションを行いましょう。特にトイレ、浴室、キッチンなどの水回りは生活感が出やすいため、リノベーションして新しくすることをおすすめします。
消防設備に関する費用
民泊では、消防法令に基づいた消防設備の設置が必要です。
- 非常灯
- 火災報知器
- 避難誘導灯
- 消火器
物件によって設置する数が異なるため費用差がありますが、一般的には20~30万円程度かかります。
家具・家電購入費用
民泊を営むには、次の家具や家電が必要です。
- ベッド・寝具
- テーブル、椅子
- ソファ
- カーテン
- 冷蔵庫
- 電子レンジ
- 電気ケトル
- 掃除機
- ドライヤー
- テレビ
- 照明器具
- ゴミ箱
これらをすべて揃えるには、約30~40万円の費用がかかります。初期費用を抑えるため、リサイクルショップの利用や、中古品・譲渡品の活用など、初期費用を抑える工夫も有効です。
広告宣伝費
集客のために民泊サイトを利用する場合は、民泊サイトに登録・掲載する広告宣伝費が必要です。登録するサイトによって料金は異なりますが、約1~5万円程度を想定しておきましょう。
行政への届け出
民泊をはじめるには、行政への届け出が必要です。この手続きを行政書士に依頼する場合、約20~30万円の費用がかかります。初期費用を抑えたい人は、自分で手続きを行うのも一つの方法です。
民泊用のリノベーションにかかる費用の目安
ここからは、一戸建てを民泊用にリノベーションする際、どれくらいの費用がかかるのか見ていきましょう。リノベーションにかかる費用には、次のものがあります。
- 外壁塗装・張り替え
- 屋根の塗装・修理
- 床材や壁紙の交換
- 窓やドア交換
- 水回りの工事
- 間取りの変更
予算と相談しながら、民泊用のリノベーションを検討しましょう。
外壁塗装・張り替え
外壁塗装は見た目だけでなく、耐久性や安全性にも関わり、10~20年に一度のリノベーションが推奨されています。家の大きさや外壁材の種類によって費用に大きな差がありますが、一般的な戸建てであれば、約50~200万円が相場です。ただし、外壁の劣化具合によっては張り替えが必要になり、200万円以上かかるケースもあるでしょう。
屋根の塗装・修理
普段あまり目につかない屋根ですが、紫外線や雨風にさらされやすく、外壁同様に定期的なメンテナンスが必要です。耐久性は10~15年程度とされていますが、塗料の種類によっては10年前後の場合もあります。費用の目安は約50~60万円ですが、工事内容や屋根材の種類、建物の条件によって差があります。
床材や壁紙の交換
床や壁の張り替えは、内装の印象を大きく変えられます。オーナーが思い描くイメージを反映しやすく、清潔感やオシャレ感を高められるため人気です。フローリングの張り替えは、集成材で約5~10万円/6畳、無垢材で約12~25万円/6畳が目安になります。畳の張り替えであれば、約7~20万円/6畳を想定しておきましょう。壁紙の張り替えは約5~10万円/6畳が相場です。
ただし、床材も壁紙も種類や素材によって費用は大きく異なります。たとえば、海外から仕入れたこだわりの壁紙の場合、張り替え費用はグッと高くなるでしょう。ただし、壁紙の張り替えは、DIYで対応することも可能です。
窓やドア交換
住宅の開口部(窓や扉)を変更すると、防犯性や防音性が高まる、省エネ効果で光熱費が安くなるなどのメリットがあります。築年数の古い物件は、開口部に隙間ができやすいため、窓やドアのリノベーションはおすすめです。窓は約10~40万円/1窓、ドアは約5~40万円/枚が一般的な相場です。
水回りの工事
トイレ、浴室、キッチンなどの水回りは生活感が出やすく、清潔感を感じやすい場所です。そのため、築年数が10~15年を経過した物件であれば、水回りのリノベーションを検討しましょう。ただし、リノベーション費用が約100~300万円と高額になりやすいため、こだわりすぎに要注意です。
間取りの変更
民泊では、より快適な空間を目指すため、間取りの変更が必要になるケースもあるでしょう。壁を撤去する、1部屋を2部屋に分けるなどの小規模な間取り変更であれば、約20~30万円で可能です。しかし、大規模な間取り変更を行う場合は、約500~800万円もの費用が必要になることがあるため注意が必要です。
初期費用を抑えたい人は、優先順位を決めて少しずつリノベーションを実施することをおすすめします。民泊経営の実績がつけば、ローンの審査にとおりやすくなり、開業当初より低い金利で借り入れできるかもしれません。予算と相談しながら、無理のない範囲で適切なリノベーションを行いましょう。