賃貸併用住宅のデメリットとは?建てる前に知るべき注意点と対策を紹介

賃貸併用住宅であれば、負担している住宅ローンの支払いを自分の収入だけでなく、家賃収入からも補えるというメリットがあります。返済完了後は家賃が副業収入になるのも魅力です。しかし、賃貸併用住宅にはさまざまなデメリットがあるため、メリットと比較して検討することが大切です。賃貸併用住宅を建てる前に知っておきたい、デメリットを解説します。
目次
賃貸併用住宅とは?仕組みと注目される理由
賃貸併用住宅は、一棟の建物のなかに自宅と賃貸住宅を併設した住宅のことです。土地の有効活用や家賃収入、会社員でも賃貸経営がはじめられることから多くの人が注目しています。賃貸併用住宅で収入が得られる仕組みや賃貸併用住宅が注目される理由など、賃貸併用住宅の魅力を解説します。
自宅+賃貸で収入が得られる仕組み
家賃収入を得られることが、賃貸併用住宅のメリットです。たとえば、1階に家賃8万円の賃貸住宅を2部屋、2階を自宅の賃貸併用住宅であれば、毎月16万円の家賃収入が得られます。
また、家賃収入は住宅ローンの返済にあてられるため、十分な資金がなくても家を建てることが可能です。ただし、賃貸住宅は管理会社への手数料や固定資産税、修繕費などの支出も考慮しておかなくてはなりません。賃貸住宅の規模が大きいほど収入は増えますが、修繕費や税金などの支出が増える点に注意が必要です。
住宅ローン控除も利用可能!
賃貸併用住宅は、住宅ローンの利用が可能です。住宅ローンはアパートローンに比べて金利が低いため、多額の資金が必要なアパート経営をはじめるときに大きなメリットとなるでしょう。
また、住宅ローン控除の対象にもなります。住宅ローン控除を利用すると、新築住宅であれば最大13年間、年末の住宅ローン残高の0.7%を所得税から差し引けるのです。所得税から差し引けなかった分は、住民税から控除することもできます。ただし、住宅ローン控除を利用するには、次の条件を満たす必要があります。
- 住宅の床面積が50㎡以上
- 床面積の1/2が自己の居住用
- 住宅ローンの借入期間が10年以上
- 住宅取得から6カ月以内に入居し、その年の12月31日まで住んでいる
- 適用を受ける年を含めて前後5年間、長期譲渡所得などの減税措置の適用を受けていない
- 省エネ基準に適合している(2024年1月以降に建築確認を受けた新築住宅の場合)
- 控除を受ける年の所得が2,000万円以下
- 適用期限は2025年12月末まで
これらの適用条件は、法改正に伴って変更になることがあります。詳しくは、各自治体の税務署に確認してください。
将来の資産形成や相続対策としても注目
賃貸併用住宅の家賃収入は、老後の収入を得る手段としても注目されています。賃貸併用住宅なら家賃収入が見込めるため、年金以外の収入として将来の生活資金や資産形成にあてられるのです。
また、賃貸併用住宅は相続対策の観点からも注目されています。人に貸す建物(アパートやマンション)が建っている土地を「貸家建付地(かしやたてつけち)」といいます。この貸家建付地は、財産としての評価額が下がるため、相続税の負担軽減につながるのです。
なお、貸家建付地は貸付事業用宅地として「小規模宅地等の特例」が適用とされ、一定の条件を満たせば200㎡までの土地の相続税評価額を50%減額することが可能です。さらに、賃貸併用住宅の自宅部分を配偶者や一定の親族が相続する場合は、自宅部分の土地の評価額を80%減額できます。
賃貸併用住宅のデメリットとその背景
魅力の多い賃貸併用住宅ですが、デメリットや注意すべき点はあります。しかし、事前にデメリットを把握しておくことで、リスクに備え、対処法を考えられます。ここからは、賃貸併用住宅で起こり得るデメリットやその背景を見ていきましょう。
空室リスクや賃料下落など収支が不安定
賃貸併用住宅は家賃収入が見込めるものの、想定どおりに入居者が入らなかったり、賃料の下落が起こったりすることで、収支が不安定になるおそれがあります。一般的なアパートやマンションと比較すると賃貸戸数が少ないため、1部屋の空室が与える影響が大きいと考えておきましょう。さらに、物件のオーナーと暮らすことに抵抗がある人も多く、通常の賃貸物件よりも入居者獲得のハードルは高くなる傾向があります。
生活音・共有スペースなどのプライバシー問題がある
賃貸併用住宅では、騒音対策や共有スペースのプライバシーを確保する必要があります。特に木造住宅の場合、生活音が響きやすいため、入居者だけでなくオーナー自身もストレスを感じることがあります。管理会社に管理を委託していても、同じ建物内にオーナーが住んでいれば、直接オーナーにクレームを言いに来る入居者もいるでしょう。このように賃貸併用住宅は、入居者トラブルに巻き込まれやすく、プライバシーを良好に保ちにくいデメリットがあります。
売却しにくいという流動性が課題
賃貸併用住宅は特殊な間取りで、売却しにくいというデメリットがあります。たとえば、自分たちが住む家を探している人にとって賃貸部分は不要で、通常の生活には不向きな印象を受けるでしょう。また、賃貸経営を検討している人は、利回りの低い賃貸併用住宅を避ける傾向にあります。賃貸併用住宅を求める人は、決して多いといえません。したがって、将来的に売却を考えている人は、売却が難しくなることを考慮しておかなければなりません。
住宅ローンの審査が厳しくなる
賃貸併用住宅は、通常の住宅より建築費用が高額になることが多いため、住宅ローンの審査は厳しくなる傾向があります。金融機関が審査の際に重視するポイントは次の5つです。
- 申込者の属性
- 信用情報
- 健康状態
- 物件の担保価格と収益性
- 返済負担率
これらの項目を総合的に見て判断されますが、加えて家賃収入の安定性や物件の資産価値など投資的な側面からも判断されます。したがって、申込者の安定した収入と信用力、さらに収益性の高い事業計画を立てて、金融機関を説得する努力が必要になるでしょう。
自宅部分の間取りが制限される
賃貸併用住宅は、マイホームとしての快適性だけでなく、プライバシーの確保や、建物の耐久性・快適性の確保、入居者が住みやすい間取りを考慮する必要があります。そのため、オーナーが自由に設計できる注文住宅とは異なり、ある程度間取りが制限される点はデメリットとなります。
また、アパートやマンションの建築には詳しいものの、賃貸併用住宅の施工経験が少なく、設計や間取りの融通が利かない会社が多いのも実情です。オーナーの希望を叶えるには、賃貸併用住宅の施工実績が豊富で、設計力の高い会社へ依頼しましょう。
後悔しない賃貸併用住宅を建てるには
賃貸併用住宅のデメリットから、建築をためらう人もいるかもしれません。しかし、デメリットをあらかじめ把握して、対策することでカバーできます。後悔しない賃貸併用住宅を建てるには、どういったことに注意すればよいのか解説します。
プライバシー・防音対策をする
後悔しない賃貸併用住宅を建築するには、エリアやターゲット層に合わせてさまざまな視点から「快適な家づくり」を考えることが大切です。たとえば、ファミリー層をターゲットに防音対策を重視するなら、木造住宅よりも鉄骨造や鉄筋コンクリート造が適しています。さらに、防音性の高い床材や壁材を導入することで、走ったり、物を落としたりしたときの騒音を大幅に軽減できるでしょう。
また、賃貸併用住宅では、プライバシーの確保も見逃せない問題です。縦割りタイプの賃貸併用住宅なら、オーナーも入居者もそれぞれ1、2階を利用できます。それによって出入口を完全に分けて生活空間を明確に区別できるため、オーナーと入居者のプライバシーを守れます。
空室を防ぐ、入居者に人気の間取り
地域の需要に合わせた間取りを採り入れることで、空室を防ぐことが可能です。たとえば、単身者が多いエリアでは、6~8畳の1Kや10~12畳の広めの1LDKなどに需要があります。一方、ファミリー層やカップルが多いエリアでは、2LDK以上の間取りが好まれます。
このように、地域の需要や入居者のライフスタイルを考慮した間取りを採り入れることで、入居者の満足度を高め、安定した入居率が維持できるのです。結果的に空室リスクの低減につながるため、持続的な収益が期待できるでしょう。
複数のプランを比較検討する
ハウスメーカーや工務店のなかには、賃貸併用住宅の施工経験が少ない、もしくは施工実績のない業者も少なくありません。したがって、複数社のハウスメーカーに相談して、それぞれのプランを比較検討することが重要です。比較することで各社のメリット・デメリット、間取りや設備、デザイン性などがわかり、理想の賃貸併用住宅を建築できます。