防火地域ではどんな建築制限があるの?家を建てるときの重要ポイント
防火地域や準防火地域に定められている土地では、家を建てるときにさまざまな建築制限を受けます。建築の制限があるのは、火事の延焼や緊急車両の通行を妨げないためです。
建築制限があるため、防火地域や準防火地域で家を建てるときは、制限のない土地と比べると建築費用が高くなる傾向があります。購入を検討している土地が防火地域や準防火地域に指定されている場合は、どういった家を建てられるのかあらかじめ把握しておきましょう。
狭小住宅や狭小地に関することなら
BLISSにお任せください
目次
防火地域・準防火地域ではどんな建築制限を受ける?
家を建てようと考えている土地が防火地域や準防火地域の場合、さまざまな建築制限を受けることになります。防火地域や準防火地域では、階数や延べ床面積に応じた建築制限があります。
防火地域と準防火地域の違いや、それぞれどのような建築制限を受けるのかを紹介します。
防火地域と準防火地域とはどんな地域のこと?
防火地域と準防火地域とは、都市計画法において「市街地における火災の危険を防除するため定める地域」(都市計画法 第9条第21項)として、指定されるエリアのことです。主に、駅前や建物の密集地、幹線道路沿いなどが防火地域や準防火地域として指定されています。
建物の密集地が防火地域や準防火地域に指定されるのは、火事の延焼を防ぐこと、幹線道路は火災発生時に、消防車などの緊急車両の通行を邪魔しないようにすることが目的です。
防火の必要性が高い順から、防火地域、準防火地域、法22条区域があります。防火地域は、火災が発生すると多くの人が被害を受けることになるため、一番規制が厳しくなっています。
防火地域の建築制限
火災の予防や延焼対策をとるべき防火地域では、燃えにくい建築物を建てることが防火につながります。
燃えにくい建築物として「耐火建築物」があり、耐火性能のある材料が使用されています。耐火建築物は建築基準法で定められた基準を満たす必要があり、火災が起こっても周囲に燃え広がらず、倒壊せずに耐えられる性能を求められます。
燃えやすい木造ではなく、鉄筋コンクリートや耐火被覆(火に強い材料で覆うこと)の鉄骨造が耐火建築物です。加えて窓や出入り口など開口部で、延焼のおそれがある部分には防火窓や防火ドアなどの防火設備を設けなければなりません。
防火地域で建物が次のいずれかに該当する場合、耐火建築物にする必要があります。
- 地階を含む階数3以上の建築物
- 延べ面積100㎡超の建築物
該当しない建物でも防火地域にある場合は、準耐火建築物にする必要があります。耐火建築物ほどではありませんが、火災のときに一定時間を耐え続け、延焼を抑制する性能が準耐火建築物に求められます。
「階数3以上」という条件は、3階建てだけでなく、地階のある2階建ても当てはまるため注意が必要です。
防火地域の建築制限をまとめると、次のようになります。
延べ面積100㎡以下 | 延べ面積100㎡超 | |
---|---|---|
地階を含む階数3以上 | 耐火建築物 | 耐火建築物 |
地階を含む階数1、2 | 準耐火建築物 | 耐火建築物 |
準防火地域の建築制限
準防火地域は、防火地域の周りを囲むように広範囲で指定されています。延焼の抑制が目的ですが、防火地域ほど建築規制は厳しくありません。準防火地域内の建築物は、規模に応じて建築基準を満たす構造にすることが義務づけられています。
準防火地域内で家を建てるとき、次のいずれかに該当する場合は耐火建築物でなくてはなりません。
- 地上階数4以上の建築物
- 延べ面積1,500㎡を超える建築物
防火地域と比べて耐火建築物を求められる延べ面積が15倍に増えていることから、防火地域がいかに厳しいエリアなのかおわかりいただけるでしょう。また、準防火地域では地階を含みません。
次のいずれか該当する場合は、準耐火建築物にする必要があります。
- 地上階数3以下で延べ面積1,500㎡以下の建築物
- 地上階数2以下で延べ面積500㎡を超え1,500㎡以下の建築物
建築制限が準耐火建築物であっても、耐火建築物を建てても構いません。準耐火建築物以上の耐火性能を有する建築物を建てることが求められています。
地上階数2以下で延べ面積500㎡以下であれば、「技術的基準適合建築物」を建てることが求められます。技術的基準適合建築物とは、延焼のおそれがある外壁や軒裏などに、一定の防火対策を施した建築物のことで、準耐火建築ほどの性能は求められません。また、準防火地域の場合は地上階数のため、地上に出ている階数のみのカウントです。
延べ面積500㎡以下 | 延べ面積500㎡超1,500㎡以下 | 延べ面積1,500㎡超 | |
---|---|---|---|
地上階数4 | 耐火建築物 | 耐火建築物 | 耐火建築物 |
地上階数3 | 準耐火建築物 | 準耐火建築物 | 耐火建築物 |
地上階数1、2階 | 技術的基準適合建築物 | 準耐火建築物 | 耐火建築物 |
法22条区域と新たな防火規制区域とは
法22条区域とは、都市計画区域内外にわたって指定されている、準防火地域の周りを囲む地域のことです。主に木造住宅が密集している地域に指定されています。
法22条区域では燃えにくい屋根や外壁を使用しなければいけないことから、「屋根不燃化区域」とも呼ばれているのが特徴です。
東京都には「新たな防火規制区域」という規制もあります。ほかの道府県よりも東京都は木造住宅が密集して道も狭い地域が多いため、災害時の安全性を確保すべく、2003年に東京都建築安全条例に基づく新たな防火規制が定められました。
東京都建築安全条例に基づいて指定された地域を、新たな防火規制区域といい、新防火区域とも呼ばれています。新たな防火規制区域で家を建てるときは、原則として準耐火建築物以上にしなければなりません。
規制を厳しい順に並べると、次のようになります。
- 防火区域
- 新たな防火規制区域
- 準防火区域
- 法22条区域
狭小住宅や狭小地に関することなら
BLISSにお任せください
耐火建築物と準耐火建築物とはなに?
耐火建築物と準耐火建築物について、さらに詳しく解説します。
耐火建築物
耐火建築物の基準は建築基準法第2条第9号の2で明記されており、簡単にまとめると次のとおりです。
- 建築物の主要構造部(壁・柱・屋根・床・階段・はり)が耐火構造
- 建築物の周囲で火災が起こったときに、火災の終了まで耐えられる
- 延焼する可能性のある外壁の開口部に防火戸や防火設備を設けている
国土交通省では耐火建築物における火災の終了を、約1〜3時間としています。耐火建築物の規制は、火災が発生したときに建物から住人が安全に避難できることや、周辺建物に被害が出ないことを目的に定められています。
耐火性能の技術的基準は、次の表のようにまとめられています。火災による熱が加えられたとき、定められた時間だけ構造に支障のある変形、溶融、破壊などの損傷を生じないことが求められます。
建築物の部分 | 時間 | |||||
---|---|---|---|---|---|---|
最上階と最上から2~4の階 | 最上から5~9の階 | 最上から10~14の階 | 最上から15~19の階 | 最上から25以上の階 | ||
壁 | 間仕切り壁(耐力壁に限る) | 1時間 | 1.5時間 | 2時間 | 2時間 | 2時間 |
外壁(耐力壁に限る) | 1時間 | 1.5時間 | 2時間 | 2時間 | 2時間 | |
柱 | 1時間 | 1.5時間 | 2時間 | 2.5時間 | 3時間 | |
床 | 1時間 | 1.5時間 | 2時間 | 2時間 | 2時間 | |
はり | 1時間 | 1.5時間 | 2時間 | 2.5時間 | 3時間 | |
屋根 | 30分間 | |||||
階段 | 30分間 |
※建築基準法施行令 第107条第1項をもとに作成
準耐火建築物
準耐火建築物の基準についても、建築基準法の建築基準法第2条第9号の3に明記されています。まとめると次のとおりです。
- 建築物の主要構造部(壁・柱・屋根・床・階段・はり)が耐火構造に準ずる
- 延焼する可能性のある外壁の開口部に防火戸や防火設備を設けている
準耐火建築物は延焼の抑止が目的です。倒壊を防ぐことまでは、含まれていません。準耐火建築物だと火災が終わったあとに、建物が倒壊するおそれがありますが、耐火建築物であればこれらのリスクも配慮された構造になっています。
準耐火性能の技術的基準は、次の表のとおりです。火災による加熱が加わっても、定められている時間で構造上に支障のある変形や溶融、破壊などの損傷を生じない必要があります。
建築物の部分 | 時間 | |
---|---|---|
壁 | 間仕切り壁(耐力壁に限る) | 45分間 |
外壁(耐力壁に限る) | 45分間 | |
柱 | 45分間 | |
床 | 45分間 | |
はり | 45分間 | |
屋根(軒裏を除く) | 30分間 | |
階段 | 30分間 |
※建築基準法施行令 第107条第2項の1をもとに作成
狭小住宅や狭小地に関することなら
BLISSにお任せください
防火地域ではどんな家を建てられる?
防火地域では「地階を含む階数3以上の建築物」あるいは「延べ面積100㎡超の建築物」に該当する場合は耐火建築物にしなければなりません。
耐火建築物の条件に該当しなくても、準耐火建築物を建てることを求められます。また、防火地域でも3階建ての木造耐火建築物を建てることもできます。防火地域ではどういった家を建てられるのかを紹介します。
3階建ての耐火建築物
防火地域内でも耐火構造であれば、3階建ての家を建てられます。鉄筋コンクリート造で3階建ての家を建てる場合、坪単価120〜150万円が相場です。30坪の家を建てる場合は、3,600~4,500万円の費用がかかる計算になります。
防火地域や準防火地域に該当しない地域と比べると、建築費用は1.2〜1.6倍かかります。
3階建ての木造耐火建築物
燃えにくい材料で家を建てなくてはならない防火地域では、木造住宅を建てられないと考えている方は少なくありません。しかし、国土交通省が認める耐火構造の仕様で建築すれば、木造でも3階建ての耐火建築物を建築できます。
建築費用は鉄筋コンクリート造より割安で、しかも工期が短いのも魅力です。重量が軽いため地盤強化の費用も抑えられます。ただし、職人の腕によって仕上がりにばらつきが出ることに注意しましょう。
木造耐火建築物で3階建ての家を建てる場合、坪単価70〜80万円が相場です。30坪の家を建築する場合は、2,100〜2,400万円の費用が必要です。
2階建てで延べ面積100㎡以下の準耐火建築物
防火地域でも2階建てで延べ面積100㎡以下であれば、耐火建築物でなく準耐火建築物で家を建てられます。準耐火建築物の鉄筋コンクリート造で2階建ての家を建てる場合、坪単価は90〜120万円が相場です。20坪の家を建築する場合は、1,800〜2,400万円の費用が必要になります。
耐火建築物の坪単価は120〜150万円が相場なので、20坪の家を建築すると2,400〜3,000円の費用が必要になります。準耐火建築物にすることで金額の差は2,400万円-3,000万円で、600万円も安く抑えることが可能です。
狭小住宅や狭小地に関することなら
BLISSにお任せください